地方の医療の質が東京よりも絶対に低くなる理由 -人材供給編-

断言します。
東京、しかも特に23区内は日本で一番医療の質が高いです。
言い換えれば、地方は医療の質がかなり低いです。

さて、その原因は何なのでしょうか。
もちろん、厳密には医療の質は医師の質に寄りますので局所的には医療レベルが高いところが産まれる、といったことも起こり得ますが、今回はマクロな視点で見ることにします。

医師は、もちろん医学部医学科(医師を養成する過程)で教育を受けますが、それでは、例えば人口600万人を超える千葉県では、医学部医学科を持つ大学は何校あるかご存じですか?
…答えは、1校(千葉大学)です。

千葉大学の医学科は一学年100名ですので、千葉大学を経て毎年100人あたらしい医師が排出される計算になります(医者にならなかったり、医師免許が取れない人もいますけどね)。特に地方においては、地元の大学を卒業した医師、以外ですと、どこかから一本釣りしてきた医師、よっぽどUターン就職したい医師、でない限りほとんど他の地方に移動することはないので、千葉大学を卒業したインターン(医師)=千葉で働く医師の増加数、と考えて間違いはないでしょう(自治医大は今回考慮に入れてません)。

さて、実際、千葉は医師の獲得がかなり難しい地域になっています。
また、このご時世、産科にいきたいという医師は100人中ほとんどいないでしょうから、産科であたらしい医師を獲得するのは相当難しいでしょう(逆に、皮膚科や眼科などに流れる人は供給過多になってるかもしれませんけどね)。他地域の医師を引き抜いてくるのにも、多額のコストがかかります。
現存の医師で現場を回す→疲弊して徐々に現場から医師が離れる→あたらしい医師が確保できない→医療の質が低下する、といったサイクルになってしまうのも自明です。

千葉だけがこうなのか、と言えばもちろんそう言ったことはなく、基本的に1校しかない県がほとんどなんです。

だいたい、医学部医学科を擁する大学は、全国で79校あるんですが、そのうち14校は東京を本拠地にしている大学ですから、医師の排出数は東京が圧倒的に多いことが分かります。しかも、国立大学で医学部医学科を持つ大学が2校あるのも、東京だけなんですよね(東京大学東京医科歯科大学)。まぁ、今回の場合国立と私立に違いはないのですが、しかも、両校は同じ文京区内で、歩いていける距離にありますし、東京医科歯科大学の隣は順天堂大学病院だったりと、過剰とも思える充実ぶりなんです。

医師の数を増やそう!なんてことで大学の定員を増やそうとする動きなどがありますが、正直、焼け石に水だと思います。100人の定員を、105人に増やしました!としたところで何処まで意味があるのか。いや、もちろん全く意味がないとは思いませんが、それ以上に、東京で教育を受けた医師をどのようにして地方に回帰させて、そこで定着させるのか、ということに国は尽力をすべきじゃないでしょうか。